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2018年1月11日 (木)

星野仙一さんの講演全文

先日、星野仙一さんが亡くなられたことはニュースでご存じの方が多いと思い
ます。星野さんといえば、野球界を牽引してきた“闘将”であることは言うまでも
ありません。
その、星野さんの講演を一度だけ目の前でお聞きしたことがあります。
今、その内容を振り返ってみると、その“熱さ”が再び蘇ってきます。
以下、全文を掲載しますので、ご興味のある方はご一読ください。

※以下の講演内容は撮影録音不可の会場で私が書き取ったものです。
  一部言葉足らずな箇所、意味不明な部分があるかもしれませんが
  ご容赦下さい。

 

平成16年12月3日(金)
NEC C&Cユーザーフォーラム (東京ビッグサイト)

特別講演: 「前へ・・・名将に学ぶ最強チームマネジメント」

講演者: 阪神タイガース オーナー付シニアディレクター 星野 仙一


○ 事前配布パンフレットより
閉塞した現状を打破し、成果を勝ち取るための最強チーム作り。ただ目標を
掲げるだけでは、部下はついてきません。チームメンバーの意識改革、最適
な配置、新たな人材の発掘・育成・・・。人を動かし人を活かす組織へと変革
するために、リーダーは何をなすべきなのでしょうか。
低迷するチームを立て直し、ついに優勝へと導いた名将が、「勝てるチーム」
作りのためのマネジメントとリーダーシップについて全てのビジネスマンに
提言します。


○ 講演内容 (60分間)
おはようございます。朝早くからこんなに多くの男性ばっかりの前で話をする
のもちょっとないことですが・・・
「名将に学ぶ」、う~ん、私も非常に多くのことを人から学んだのですが、まだ
まだです。監督という仕事ほどストレスが溜まる仕事は無いですよ。上手く行
かなければ毎日のように胃が痛くなります。また選手がいいプレーで働けば
こんなにうれしいこともありません。
野球の中でも、もちろんITは使っていますよ。しかしこんなに邪魔なものもあり
ません。特に投手は非常に細かいところまで徹底的に研究されます。ちょっと
グラブが動けば次は変化球だとか、配球や癖など研究され尽くします。これ
からは本当に投手受難の時代でしょうね。


昨日、松坂が10勝で2億5000万円で契約しましたね。私たちの時代を考えたら、
たかだか10勝で2億なんて考えられません。
私ももう一度現役復帰しようかと思いますよ。まぁ、それも時代の流れでしょうか
ね。また今年はどこかのオーナーが新人選手の獲得にかこつけて辞任してしま
いました。あれはどう考えてみてもおかしいでしょう。今日は、全て本音で話しま
すよ。皆さんならお分かりになるでしょう。新人について理由付けして辞めてしま
いました。本当はやっちゃいけないことをウラでやっていたのに、そうではない
ところで理由付けして辞めたのですね。
こんなこと言っちゃ何ですが、正直、タクシー代、食事代なんていうのは日本では
当たり前ですよ。それにたかだか数十万から百万程度の金額で読売新聞のCEO
が辞めますか!?
あの一場という男は3人辞めさせましたから、相当の大物ですよ。


もし皆さんがプロ野球という世界に派遣されたらきっとビックリしますよ。
球団もコミッショナーも何もやっていない。
FAやドラフトなどは巨人が都合のいいように決めて、やってきました。ウラでも
今回の件のようにいくらでもやっているのですよ。でも違反を犯しても、その違反
に対するペナルティが無いのです。これではいけません。
本当はどんなに凄い有望新人でも契約金は1億しかあげられない。
インセンティブでも5000万までです。そういう決まりになっているのです。しかし
現在、ウラでもっといろいろとやっているのが皆さんの大好きな巨人なのですよ。
もうルールなんてそっちのけです。逆にグランドでは私が「バカヤロー!ボケ!
!」と言えば退場で数百万の罰金を取られます。普段から使っている言葉を普
通に使って退場なのだから困ります。スーツを着た人たちは、口では格好の
いいことを言うのです。グランドではスポーツマンらしく、紳士的にしなさいなど
と言って、自分たちはウラでもっと(ひどいことを)やっているのです。


チーム編成も完全ウェーバー方式にすべき(成績下位球団から順番に、選手が
重複しないように指名していくやり方で、日本シリーズで負けたリーグの6位、
シリーズ勝ちリーグの6位、シリーズ負けリーグ5位、勝ちリーグ5位・・・という順
での指名)。
これも賛否両論あるようだが、誰もが納得するような制度なんて有り得ないです
よ。最近はメジャーリーグへ行く選手も増えてきたが、メジャーへ行くにもただで
行かせなくてもいいでしょう。期限付きのレンタル制度などを使えばいいじゃない
ですか。
松井秀喜はFA権を使ってメジャーに行ったので、誰からも何も言われることは
ないが、イチローはFA前にオリックスがメジャーに売ってしまったのですよ。FA
じゃないから売ったオリックスには、移籍に伴ってお金が入ったわけです。一度
売り飛ばした選手ですから、もう買い戻そうとしても難しいですよね。
もっとアメリカと日本で話し合いをして、メジャーに行った選手が日本にまた戻っ
てくるようにしなければ、日本のプロ野球はどんどん衰退していってしまうと思い
ます。


正直、今年のストライキ等のゴタゴタで若い人はプロ野球に対しての興味が
冷めてしまったでしょう。ここにいるような、おっさん達は野球が好きなのです。
でも若い人たちは違います。だから今の現役選手たちがこの2~3年の間に
余程感動を与えるプレーをしていかないとプロ野球はジリ貧になるでしょうね。
それが私は一番心配です。


日本プロ野球界には正直、リーダーはいませんね。コミッショナーはいます
が、何の権限も無いし、野球を何も知らない人がやっても何が出来ますか。
メジャーリーグもかつてはそうでした。何の権限もないコミッショナーの席には
座り手が誰もいませんでした。
ある時、コミッショナーになって欲しいと、お願いしたらその人が、一筆書いて
くれたらなりますよと言いました。それが「私の言ったことが最終決定となる」
という一文だったのです。
その一文を加えて以来、メジャーではコミッショナーの力がだんだん強くなっ
てきました。メジャーリーグではコミッショナー権限で30球団に利益を分配して
います。ヤンキースはスター選手も多いし、試合には観客もたくさん入ります。
その興行以外にもケーブルテレビの放映権でガッポリ儲けています。
そういう独占的に儲けた利益もコミッショナーに対して年間60億くらい払って
いるのです。しかし巨人は自分だけの利益にしてしまっています。
それでいてパリーグは客が入らないから何とかしろとか、自分の都合だけで
何でも決めてしまってルールも何もあったものではないのです。
一極集中は本当に危険ですね。


例えば今年の3月、東京ドームでメジャーリーグの開幕戦をやりました。あれ
は読売が決めたことなのです。しかし、その時期はパリーグの開幕時期でも
ありました。さあ、これから球春だという時に東京ドームでメジャーの試合を
やるなんて、それを反対しないで何も言えないパリーグのオーナーならそれ
こそ辞めた方がいいですよ。
パリーグも、ウチは観客数が少ないからなんて言っていますが、それも逃げ
口上なのです。パリーグは本当に経営努力をしていません。
今回パリーグに楽天とソフトバンクが新たに参入しましたが、どうやら年寄り
連中にネチネチやられて、このままでは改革も出来ずに終わってしまうように
思います。私もマスコミにいろいろ言ってきたので、経営者連中からは嫌われ
ています。たまに「コミッショナーを星野にやらせろ」なんていう声も上がるの
ですが、コミッショナーはオーナーの4/5の承認がないとなれないのです。
ということは、星野はコミッショナーになれないということです。まぁ、なろうとも
思いませんけどね。


私は名古屋で14年、監督で計11年、プロ野球界でやってきましたが、名古屋
の監督時代のある時、途中で気持ちが盛り上がらなくなってきたのです。正直、
オーナーと上手くいってなかったのですよ。監督当時はチームを強くしよう、
お客さんにたくさん来てもらおうと努力して、右肩上がりで売上も伸びていた時
期で、オーナーから辞めろとも言い出せないだろうし、ここは自分から辞めよう
と思い、ユニフォームを脱ぎました。
今年、清原がいろいろ騒がれていましたが、清原はプロ野球界で最後のサム
ライだと思っていました。しかし私としてはその考えを撤回しなければいけない
かなと思っています。
フロントも監督もハッキリいらないと言っているのです。しかし結果として頭を
下げてまで読売に残ったのはさみしいですね。いらないと言われたのなら、他
の球団で最後まで頑張ってやり返せばいいのにと思うのです。


一度中日の監督を辞めてからも、60歳まではユニフォームを着たいと思ってい
ました。辞めて一度リフレッシュに米国へ行ったのですが、その前に実は3回
ほど電話があり、直接ではないが、「阪神の監督をやってもらえませんか」と
誘われて断っていました。
アメリカへリフレッシュしに行って帰ってきたとき、阪神の球団社長から直接会っ
てくれと言われました。「それなら私がそちらへ伺います」と言ったのですが、
「こちらがお願いしているのだから私がそちらへ伺います」ということになりまし
た。その時、私は話を聞くだけで、全く引き受ける気はありませんでした。立場
上、今までお世話になった中日新聞のオーナーにも、引き受ける気はありま
せんが一応話だけは聞きますと報告しておきました。中日新聞の社長も、最初
は「名古屋で育てた人が阪神から誘いを受けるなんてうれしいですね」という
反応でした。しかし、阪神の社長に会って話を聞いたあと中日新聞のオーナー
に会って言われたことにカチンと来て、「ようし、やってやろうじゃないか! 
受けたる!!」と決心しました。


そうなったあとは気持ちも若くなりましたし、モチベーションも一気に上がりまし
たね。大阪の人は大賛成でしたが、名古屋の人は大反対でした。男性は8割
反対、女性は10割が反対でしたよ。しかし周りの野球関係者からも応援して
くれる声が多かったです。あのカン高い声で「伝統の巨人阪神戦を再現して
くれ!」と、長島さんからも言われて、引き受けることになりました。


しかしいざ引き受けてみて、選手を見てみると、正直「これじゃなぁ」と思いまし
た。そこからスタートする時に、星野という人間を知ってもらうように努力しまし
た。まだその時点では選手と直接会っていませんでしたので、自分がどんな
人間か、どんな考えを持っているのかを一方的ではあったかもしれませんが、
マスコミを通じて伝えていきました。1月に選手と初めて会った時に「オレは優
勝させるために来た!」と言いました。
選手達は「このオッサンなんや?」という顔をしていました。だれも優勝経験も
なく、最下位を何年も続けていたチームですよ。でも最初から優勝を考える
ことを大前提としました。「優勝までのプロセスは苦しいものになるが、一緒に
戦っていこう! タイガースのブランドにプライドを持て!! ユニフォームを
着たら、そこからが勝負なんだ!!! とにかく勝ちたいんや!!!!」


阪神の監督になって1年目、スタートは上手くいったものの、けが人が多数
出て結果として4位になりました。しかし4位でも阪神ファンは喜んでくれて、
甲子園最終戦では監督の私が挨拶しなければならないのに4位で超満員に
なりました。挨拶の中で、大歓声に乗せられて「この4位の悔しさを、来年は
感激の涙に変えてみせます!」と、つい言ってしまいました。
言ってから失敗したと思いましたが、「後ろにいる選手達も私と同じ思いで
す。」と言って道連れですよ。そこからは覚悟を決めてやりました。
その後一気に27人を辞めさせました。これはダメだという選手は全て数字
で判定しました。大阪は特に、自分がかわいがってきた選手は優秀だとか、
ここまで育ててきた選手だからといって、大したこともない選手を残したまま
にしていました。また辞めさせることに対して、抵抗も大きかったし、星野は
冷たい人間だともずいぶんいわれましたが、どんなことをしてもやってやる
と思っていましたし、辞めさせた選手も、いい選手なら他の球団から取りに
来るだろうという考えを持っていました。しかし他からは取りに来ませんでし
た。3人だけは他球団へ行ったかな? でもその3人も翌年はほとんど働か
なかったです。これでチームが翌年、好成績を上げれば勝ちですよ。


FAで広島から金本も取りました。実は、金本は取りたくありませんでした。
広島の中心選手で、当時は山本浩二が監督をしていましたから、「こいつ
を抜いたらカープは最下位だろうなぁ」なんていうことが頭をよぎるんですよ
ね。
でも田淵が、「そんなことを言っていたら阪神は改革出来ないよ。金本は
阪神の選手に無いものを全部持っているから取るべきだ。」と言うのです。
実力はもちろんですが、練習熱心で、気持ちも強く、何しろ体が強い。ケガ
人を多く出したこともあって、体が強くて1年間フル出場出来ることは魅力
でした。シーズン後半などは腕を骨折していたのに、テープでぐるぐる巻き
に固定して片手で打ってましたからね。この金本を採るのも非常に苦労
しました。金本は生まれも育ちも広島で、お世話になってきた広島カープ
を離れるには、やや抵抗があるという気持ちを持っていましたが、何度も
電話をして説得しました。


当時は巨人、中日、阪神と3球団が金本を採りに交渉しようとしていました。
しかし私は真っ先に連絡を取りました。しかも大物選手を採るにはお金も
必要になるのですが、巨人はいつもの通り天文学的な数字、中日は水準
よりややいい条件、阪神は一番安い条件だったのです。
球団社長にももっと出して下さいよと言いたかったのですが、出せる限界が
これだということで、その条件で交渉するしかありませんでした。電話で「オレ
も中日を出る時は相当迷った。オレはオマエよりも名古屋の人から愛されて
きたし、その名古屋を離れるには一大決心だった。それでも勝つためにこんな
ダメなチームに来て挑戦しているんだ。一緒にやろう!」 「今の気持ちはどう
なんだ?」と聞くと、「五分五分です」という答えでした。そこで「五分五分という
ことはもう来ることを決心しているということじゃないか。一緒にやろう!」と押し
ました。金本は「30分待って下さい」と言ってきたのでその場で電話を切り、
待ちましたが、その30分は本当に長く感じました。そして電話がかかってきて
「お世話になります!」という返事をもらいました。この一言は本当に嬉しかっ
たですね。私もこれだけ本気で口説いたことはありませんよ。しかも男が男を
口説くんですから、こんな経験はありませんでした。その返事をもらった後は、
「明日連絡する」と言ってすぐに電話を切りました。そこで何か言っているうち
に気持ちが変わってはいけないと思ってすぐに切ったのです。電話を切った
あとは本当に嬉しくて涙が出ましたよ。あんなことは今まで一度もありません。


阪神へ来るという決心がついて、翌日の連絡ではあの安い条件の話をしな
ければならないわけです。そこで私は「金本、おまえいくら欲しいんや」と聞き
ましたが、あいつも「それはいくらでも結構です。信じていますから。」と言うの
ですよ。だから額面を見せずに「安いぞ」と言って渡すと、金本はそれを全く
見ないですぐにカバンに入れてしまいました。あの時、中を見られたらどう
だったかと今でも思いますよ。


若い選手をチームとしてまとめていると年齢の差がありますから考え方にも
当然ズレがあります。しかし理論で負けたらいけません。野球に関してはどん
なことでも絶対に負けたらいけないのです。
また基本的なことをミスしたら私は怒ります。最近は仕方がないなぁという人
も多いようですが、私は容赦しません。
例えば、バッターが三回振って三振したならば、「おい、たまにはバットに当て
ろよ」くらいしか言いませんが、三回見逃して三振した場合は、「何しにバッター
ボックスに入っているんだ! それならオレでも出来るぞ!!」と怒鳴りつけま
す。だから基本的なこと以外のミスでは怒らないんですよ。


いつも星野は怒っていると思われがちですが、決してそんなことはありません。
いつもはこんなふうに笑顔でいるんですよ。これはテレビ中継などで怒っている
場面ばかり映すからいけないのです。大体、テレビ中継では4台くらい私専用の
中継カメラがあります。まぁ、絵になる男だから仕方ありませんけどね。それに
愛情がなければ選手を殴るなんてことは出来ませんよ。


若い選手に対しては愛情を持って一定期間は厳しく、緊張感を持たせることも
必要だと思います。選手自身の意識が高くなったら、もう怖さなどは出さずに
普通に接します。
阪神の監督になって優勝して嬉しいと思ったことはありません。それよりも
ファンの方に喜んでもらえたことに対してほっとしました。
こんな話で終わってしまって、一体何を話しに来たんだと副社長に怒られそう
ですが、これからもプロ野球のためにいろいろ提言していきたいと思います。
今日はありがとうございました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以上が星野仙一さんが講演された内容です。
実際にお聞きした時は、あの笑顔で、時には熱く、時にはユーモアを交えて
話していただきました。聞いていて、話に引き込まれましたし、とても聞きやす
かった印象があります。

読売ジャイアンツファンの私からすれば、星野さんは野球というスポーツの上
ではずっと“敵”でした。しかし、敵の大将でありながら尊敬できたのは、監督
として選手やチームの力を実力通り、あるいはそれ以上に発揮させる手腕を
脅威に感じていたからです。
これまでの星野さんの野球界への功績は、野球殿堂入りが示す通りです。

“闘将” 星野仙一さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

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